2016年1月10日日曜日

3.5MHz マイクロバートアンテナ MicroVert (追記あり)

肝心なことを書くのを忘れていましたので追記します。マイクロバートのように給電線(具体的には同軸ケーブルなどのフィーダ)から高周波を輻射するアンテナを使う場合には、周囲の人や自分自身と距離を取るようにケーブルを展開してください。また送信電力は十分安全圏に入るように下げましょう。コンパクトなアンテナは便利ですが、目の前から強い高周波が出てたなんてことにならないように。

(使ってはいけないではなくてどこから電波が出ているのか意識しようという話です)

2023/11/10 update

★★★★

諸般の事情で非公開にしていた投稿を再公開することにしました。当初写真を多用したところ、ご近所さんのベランダや屋上が写りこんだ画像が数点ありました。今回は一部削除、修正を加えたものと差し替て公開します。

このアンテナは数年前に撤去して廃棄したため手元にはありません。上げ下げが面倒くさいのでアルミパイプと塩ビパイプの隙間を防水処理しなかったところ、雨水が入り込んでビスを腐食させてしまいました。給電点の圧着端子とビス、ボルトもコーティングをしなかったので緩みやすく腐食も進んでしまいました。撤去後廃棄するために分解しようとしたところボルトが錆びて緩まないので、ラジエターをディスクグラインダーでカットするはめになりました。

ビス、ナット、ボルトはステンレス製に交換するべきでしたが、ステン製は小分けしたものが手に入りにくいです(ちょうどいいサイズのがあるようでない)。いくつかのホームセンターや道具屋さんを探せばあったのでしょうが面倒になってしまいついつい放置してしまいました。メーカー製のアンテナには多めにステンレスの部品が入っることがあるので、それらを保管しておいて使うといいかもしれません。

コモンモード・フィルタ(チョーク)はタカチのプラスチックケースにいれましたが、塩ビパイプに入れて防滴防水にするか市販品で防水構造のものを使った方が無難です。雨ざらしになる場所にビニール袋に入れた程度では水が沁み込んできてコネクターやケーブルを腐食させます。時々袋から取り出して乾かすのも面倒です。

自作品ですから完璧さを求める必用はありませんが、長期的に使うとなるといろいろ課題が出てきます。「ぶっ壊れたらそれまで」「見た目は関係ない」「そもそも自作品」という考え方もありますが、耐久性や解体のことを考えると丁寧に仕上げるに越したことはありません。

尚、本文に書いてありますが3.5MHz帯(JAの80kHz)はSWR3.0以下でカバーできたのと、ローケーションの悪いバルコニーに設置した割にはまあまあ使えました。フルサイズダイポールと比べるものではありませんが、限られた場所でローバンドをやりたい方にとっては一応使えるアンテナだと思います。

変形コブラアンテナ、片側パイプ(コンデンサ)・コイルの直列共振回路の変形垂直ダイポール…いくつものアイデアを融合させた面白いアンテナでした。

update 2023/9/3

以下本文

★★★★

(この投稿の内容は2013年12月頃の出来事です)

3.5MHz用のマイクロバートアンテナを作ってみました。調整や設置の参考になればと思い、投稿にまとめました。寸法などは各局のサイトを参考にしています。



まずコモンモード・フィルタ(チョーク)を作りました。FT240-43相当品に3.5D-QEVをW1JR巻きにして2個直列です。2個のコアは密着しない方がいいのですが、細かいところは目をつぶってください。タカチのケースに入れましたが防水ではありません。中継コネクタを取り付けたのは脱着しやすくするためです。※通常コアは1個で大丈夫です。








今回1φのホルマル線は1㎏まとめ買いしましたが、生涯使い切ることはないでしょう。。

塩ビパイプにコイルを巻きますが、軽く張力をかけるだけで解けることはありませんでした。自己融着テープで仮止め。LCRブリッジでインダクタンスを測り巻き数を調整します。多めに巻いてカットすると良いです。

画像ではデリカ(三田無線)のミニブリッジ・M-1Dを使ってインダクタンスを測ってます。廉価なもので良いのでLメーターはあった方がいいです。


ラジエターは径の違う2本のアルミパイプで作りました。つなぎ目に割りを入れてホースバンドで止めます。画像では割りを入れ過ぎてます。


給電点です。同軸ケーブルをエポキシのパテで固定、防水を兼ねてます。圧着端子には導電グリスを塗りました。巻き数が決まったらコイル全体に自己融着テープを巻きます。











仮設です(下の画像)。マストはAmazon.co.jpで買ったステンレスの伸縮する物干し竿です。画像ではわかりにくいですがグラス・ファイバー工研さんの“Uブラ”で手すりにがっちり留めました。アンテナのマストへの固定も“Uブラ”です。(竿が伸縮するのでアンテナのテスト用に良いです)

(画像1枚削除)

このアンテナの調整のポイントですが、まずSWRを計測しながら同軸ケーブルの引き回しを決めてしまいます。給電点から床まで角度を決めて、その後ケーブルの引き回しを工夫しながらSWRが最低(底)になるようにします。

SWRが最低になったらラジエターの長さを上下させて、希望する周波数に合わせます。SWRの最低点がオフバンドになる可能性がありますから、アンテナアナライザーが必要です。またこの作業でSWRの最低点を見つけられないとなると、その場所への設置は無理かもしれません。





上の画像はすぐ脇の屋上から撮影したもの。ケーブルをコンクリートブロックで挟んで固定しています。マイクロバートアンテナでは同軸ケーブルがカウンターポイズのような役割をしていて、思いっきり電流が流れます。雨で床が濡れてしまうとSWRが大きく変化して使えなくなるのでコンクリートブロックで挟むことで床から浮かせています。

試みに同軸ケーブルをベランダの手すりに吊してみましたが、手すりと結合して電気的な長さが変わってしまうのでアンテナとして動作しなくなってしまいました。また雪で同軸ケーブルが埋もれると使えなくなります。



本当は宙に浮いた方が雨や雪の影響を受けにくいのですが、このやり方で妥協です。


下の画像はコモンモード・フィルターの部分です。大きなビニール袋で包んでコンクリートブロックで挟みました。完全な露天なので時々点検しないと水が入っていることがあります。





運用できる状態にしたものです(下の画像)


(画像1枚削除)

画像ではわかりにくいですが、斜めに引いた同軸ケーブルの“角度”が調整のポイントです。
角度によってインピーダンスとSWRが大きく変化します。



SWRが一番低いところ(底)で1.5くらいになりました。SWRが2以下の帯域が50kHzくらい。バンドの中心にSWRの底を持ってくると上下のバンドエッジで3以上になりますので、その付近ではアンテナチューナーで落として使うことになります。自分の場合は3.530MHzくらいにSWRの底を持ってきました。

★★★★

繰り返しになりますが、同軸ケーブルの引き回を調節してSWRが落ちないとなるとその場所に設置するのは厳しいです。できれば同軸ケーブル全体をまっすぐに、周囲の開けているところで展開したいものです。同軸ケーブルの角度や引き回しで輻射角も変わってくる‥はずです。

コンパクトなアンテナとしてマイクロバートに期待される方が多いと思いますが、同軸ケーブルの引き回しまで入れると“超小型アンテナ”とは言えません。

フルサイズと比べるものではありませんが、モービルホイップに比べたらずっと使いやすいですから3.5MHz帯の体験用にはいいかもしれませんね。

画像では実感できないかもしれませんが、当方のロケーションは非常に悪くてこのアンテナそのものはビルの谷間に設置してあります。一応国内QSOはできていますが、熱心にやっていないので報告できるような実績はありません。ロケーション次第では良い成績がでるのかも。

手持ちの資材がなかったので新規に買い集めました。マストも含めると3万円以上かかったと思います。資材が手元にあれば安上がりにできると思います。

以上です。

追記

しばらくアンテナまわりの点検をしないでいたら、屋外に出しておいたコモンモード・フィルタに被せてあったビニール袋が腐食して破れてしまい、ケースが雨ざらしになっていました。中が水浸しだったらマズイなと思いつつ分解しました。コネクタに水が入って同軸ケーブルを腐食させてしまうと切断して作り直しになってしまいます。





コネクタのネジがさび付いてましたが、内側はうっすらと水滴がつく位で済みました。コモンモード・フィルターを屋外に出さなければならないときは、防水のケースに入れてしっかり作った方が良いです。※防水の市販品を使った方が楽。

おしまい。